ソーラーパネルと景観

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ソーラーパネルの普及は2010年代から急速に進みました。日本においては2011年に起きた東日本大震災がきっかけとなっています。原子力発電が停止し、電力供給の選択肢のひとつである再生可能エネルギー(太陽光発電)に注目が集まりました。


太陽光発電の発電量は、FIT制度(太陽光発電の余剰電力買取り制度)の開始とともに、2010年度に約350万kWであったものが2019年度には約6300万kWと約20倍に増大しています。脱炭素化の取り組みに向けて太陽光発電の普及は更に加速していくと予想されています。そうした中、ソーラーパネルの普及における懸念材料のひとつとして「景観への影響」が指摘されています。このページでは、ソーラーパネルと景観における関係について詳しくご紹介しています。

ソーラーパネルとは

ソーラーパネルとは

電力を生成する機器

ソーラーパネルは日光を浴びることでエネルギーを創り出す発電機器をいいます。

自然に存在する太陽光を活用して電力を生成することから、再生可能エネルギーの代表格として広く普及しています。実際に、自然エネルギーのシェアの大半を占め、従来型の電力供給から大きな変革をもたらしました。

太陽光発電の仕組み

ソーラーパネルには様々な素材がありますが、一般的には「シリコン」が用いられます。

まずシリコンを形成してn型半導体とp型半導体を生成します。次に、それらを貼り合わせて半導体の接合面を作ります。ここに太陽光を当てることで、エネルギーを得た接合面の電子が移動して電流が発生する仕組みです。

ソーラーパネルの設置場所

通常、ソーラーパネルは家屋やビルの屋根に取付けられます。屋根は直射日光を受けやすく、発電の効率が良い場所だからです。一方、近年では建材と組み合わせたBIPVとして使用されることも増えています。これにより、屋根だけでなく建物の壁面などにも設置されるようになりました。

 

ソーラーパネルの主なメリットと特徴

脱炭素社会

ソーラーパネルの特徴

太陽光発電の特徴として「クリーンエネルギー」である点が挙げられます。

発電を行う際、二酸化炭素など温室効果ガスの排出がありません。持続可能性の高い脱炭素社会に適している面があるといえます。また、発電時の燃料が不要でありコストを低下できる点や維持・管理が簡単である点など、特徴となる長所は数多くあります。

非常用の電源として

ソーラーパネルは独立した電源としても活用できます。非常用の電力供給および家屋・ビルの省エネ性能を高める電力として適しています。特に、電力供給が停止した際に役立つポイントが多く、非常用電源としての展開が広がっています。

また、現在ではソーラーパネルの普及により規模の経済性が働き、販売価格が大きく引き下げられています。将来的にメインの電力源に近づくポテンシャルがあるとも言われています。

 

ソーラーパネルの主なデメリットと問題点

主なデメリットと問題点

発電量の変動

ソーラーパネルのデメリットとして、よく挙げられるものに「発電量の変動」があります。

発電には日光が必要となるため、悪天候の場合は発電量が大きく落ち込みます。天候は過去のデータからある程度の予測ができるとはいえ、人為的な制御はできません。

外観性

加えて指摘される問題点が、見た目のデザインである「外観性」です。

ソーラーパネルは黒色(濃紺)で機械的な受光面をもちます。いかにも人工的な外観となっており、設置場所によっては景観を乱す要因となります。特に、住宅街や観光地では顕著な問題であると指摘されています。

この問題に対しては、色素増感型など外観面の配色やデザイン性に注力したソーラーパネルの研究が進められています。しかし、発電効率の低さから普及に向けて課題が残っています。

Q
ソーラーパネルはなぜ黒色(濃紺)なのか
A

ソーラーパネルの表面は何層もの酸化膜や窒化膜、反射防止膜などに覆われています。こうした層が重なり合うことで濃紺~黒色の色味となります。また、変換効率の面においても光の吸収率が高い黒系の色味が適しているといえます。

 

ソーラーパネルが景観に与える影響

景観に与える影響

歪な風景となってしまう理由

景観面でのトラブルは、メガソーラー発電施設が最も多いとされています。

メガソーラーは数百~数千枚のパネルを敷き詰めるため、広大な土地面積が必要です。こうした土地は郊外・山間部などが中心となっており、田園風景の中に巨大な人工物が現れるような歪な景色が生じてしまいます。

乱立の原因

メガソーラー発電施設の多くは2011年のFIT制度以降に建造されました。電力の買い取り価格が高騰したことから急速に導入が進められ、建造の規制や地域の合意形成が未発達の状態であったという側面があります。

開発が頓挫していた遊休地や未使用の農地などにも投資目的でソーラー発電所が乱立してしまう結果となりました。

周囲への影響

ソーラーパネルの外観はどうしても自然や歴史的な建造物と相容れない部分があります。住宅街や観光地にはそぐわず、美しい景観を棄損してしまうリスクとなりがちです。

 

ソーラーパネルと景観の改善点

夕焼け

法規制

景観に関する改善点にはいくつかの項目が提示されています。

例えば、日本でも有数の観光資源が多い京都市。同市では、ソーラーパネルの設置に関する法規制が敷かれています。その内容として、ソーラーパネル設置の規制エリアを設けることや色彩基準、景観手続きの実施などがあります。ソーラーパネルの導入場所や配色を限定し、景観を守る取り組みです。

クリーンエネルギーを取り入れていくことは大変重要なことです。しかし、その土地に合った導入方法を模索するといった観点も欠かしてはなりません。

当社の取り組み(デザインソーラーパネル)

デザインソーラーパネル

当社では、太陽電池による「クリーンな発電」「外観面の意匠性」を両立できないかと研究開発に取り組んできました。

デザインソーラーパネルは、そうした中で誕生した製品です。

太陽電池の表示面に特殊なフィルムを重ねており、受光面の無機質な外観を隠しています。看板や標識などのサイン製品のほか、建材、照明器具としてもご使用いただけます。

 

今後の動向

屋根のソーラーパネル

脱炭素社会の実現へ向けて、再生可能エネルギーの活用は必須となっています。太陽光発電は再生可能エネルギーの中で最も高い比率をもちます。普及拡大が進んでいる分野でもあります。今後も太陽光発電の普及を進めるにあたり、人々の生活空間や自然と調和することが重要です。設置場所における外観性の改善や技術的なイノベーションはもちろん、規制といった法整備まで意識を高めていくことが求められます。

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