カーボンニュートラル
日本語では「炭素中立」とも呼ばれる概念です。生産活動においては、排出する二酸化炭素量と削減する二酸化炭素量を同じ値(ニュートラル)にすることをいいます。温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする取り組みなど技術開発や経済活動としても捉えられています。
カーボンニュートラルの必要性
エネルギーの存在は人々が社会生活を営むうえでの基本的な土台となっています。その中で、現在使用されている多くのエネルギー(石油・石炭・天然ガスなど)は「炭素」を含む化石燃料を燃料源としています。
炭素は酸素と結合して二酸化炭素となり、大気中に放出されます。二酸化炭素は「温室効果ガス」と呼ばれる地球の表面温度を上昇させる気体の構成要因です。二酸化炭素の排出量が増え続けると地球温暖化に歯止めが利かなくなり、様々な気候変動を引き起こすと予測されています。
現状においても、大型台風の頻発化、暖冬、海面温度の上昇といった異常気象が多々見られるようになっており、地球温暖化の片鱗が感じられます。こうした状況の中、二酸化炭素の排出量を削減し持続可能な社会を実現するための取り組みとしてカーボンニュートラルが生まれました。
カーボンニュートラルの仕組み
カーボンニュートラルは地球温暖化を抑えるために必要な取り組みです。しかし、その一方で人々が生活を営んでいくうえで二酸化炭素の排出量をゼロにすることが困難な分野も多々あります。削減が難しい事象においては、その排出分を埋め合わせるために「吸収」および「除去」といった作業を行います。
植物は光合成により二酸化炭素を吸収し酸素を放出する活動を行います。この特性を活用し、植林行動により排出量の埋め合わせを行うことを吸収といいます。植林に直接携わっていない事業者に関しては、森林所有者等が創出する「J-クレジット」を購入するといった仕組みがあります。
除去は、CCSなどの技術を用いて地中へ二酸化炭素を貯留することです。CCSはその設備を所有する大規模な事業体が存在するため、個々の事業者が実施する活動とは見做されていません。国全体のカーボンニュートラルの実現に寄与する仕組みです。
カーボンニュートラルをめぐる動き
カーボンニュートラルの取り組みを国際的に表明したものが2015年のパリ協定であり、2019年の国連気候行動サミットにおいては国単位での数値目標を具体化するまでに進行しました。
日本では2020年に菅義偉内閣総理大臣(当時)が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会の実現を目指す」と宣言を行いました。この目標を達成するために、国・自治体・民間企業など各セクターでの脱炭素に向けた行動が進展しています。
現在の主な取り組み例
近年では植物由来の燃料を用いるなど石油依存を脱却する取り組みが加速しています。例えば、バイオマスエタノールの活用やバイオプラスチックの開発といった新たな手法が注目を集めています。
経済産業省が発表した「グリーン成長戦略」においては、カーボンニュートラルに向けた投資、研究開発への補助、事業再編、税制優遇の改革が記載されています。カーボンニュートラルの取り組みに対して各種の優遇措置を取ることにより、一層の投資喚起や需要の活性化を後押しする狙いがあります。
自動車業界では、排出時の二酸化炭素を削減するだけでなく製造時の二酸化炭素削減にも力を入れています。また、電気自動車の開発など環境面に優れた取り組みが主流となりつつあります。
欧米を中心としてESG投資といった環境への資金注入が活性化しています。日本においても要項に環境性を盛り込んだ投資活動が徐々に増加してきており、今後の発展が期待されています。
カーボンニュートラルの課題点
現在の社会活動を営むうえで製品の製造・輸送において化石燃料を使用しないことは困難であり、化石燃料の燃焼によって排出される二酸化炭素をゼロにすることは現実的ではありません。
製品のライフサイクル全体を通してカーボンニュートラルを実現するためには、エネルギー調達の部分から化石燃料への依存を取り除いていく必要があります。
カーボンニュートラルの取り組みを拡大し植物由来の燃料や原材料への変換を進めていくと、植物を育成するための広大な土地が必要となります。例えば、日本では国土面積の約7倍の土地が必要だと試算されており、現状でこれらを達成することは非常に困難であるといえます。
今後の取り組み
気候変動が世界全体の課題となっている中、カーボンニュートラルは自治体や企業だけでなく個人でも考慮していくべき事象であるといえます。現実的にまだまだ大きな問題が残されている分野ではありますが、次世代へ美しい地球環境を残し持続可能な社会を作りあげるために努力を重ねていく必要があります。
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