防災用バッテリー

バッテリー お役立ち情報

「防災用バッテリー」とは、災害時(停電時)でも機能する「蓄電機能」をもつ電池を指します。多くの防災施設や避難所では、停電が発生した場合でも電気を使用できるように整備が進められています。現在ではソーラーパネルを備えた施設や街灯なども普及しており、防災用バッテリーの用途は大きく広がっています。このページでは、代表的なバッテリーの製品種類とその特徴についてご紹介しています。

鉛蓄電池

鉛蓄電池

鉛蓄電池は「正極に二酸化鉛」「負極に海綿状の鉛」「電解液として希硫酸」を用いた二次電池です。主に、自動車などの大型機器を動かすためのバッテリーとして使用されています。鉛蓄電池の特徴は以下の通りです。

価格が安い

原料である「鉛」は容易に入手可能でありリサイクルもできます。比較的安価な価格でご購入いただけます。

放電が安定している

数10A(アンペア)もの大きな電流を取り出すことができます。固定式で大容量の電力を要する機器に適しています。比較的高い電圧の機器にも対応できます。

メモリー効果が無い

メモリー効果とは、バッテリー容量が十分に残った状態でつぎ足し充電を何度もくり返すことでバッテリーが「短時間だけの使用」を記憶してしまい、容量が十分にあるにも関わらずバッテリー電圧が低下する現象です。停止電圧設定によってはメモリー効果が影響し、利用できる時間が短くなります。鉛蓄電池はメモリー効果がないため継ぎ足し充電に適しています。太陽電池による発電は毎日充放電が繰り返されるため、メモリー効果が無いという点は大きなメリットです。

保存特性がよい

バッテリーは、使わずに放置しておくと自然に少しずつ放電する現象が見られます。鉛蓄電池では、放電を1年間に10~20%程度の消耗に抑えられます。

エネルギー密度が低い

重量エネルギー密度は30~40Wh/kgと低くなっています。バッテリーの容積や重量が重くなりがちです。小型機器に搭載することが難しく、固定式の据え置き型機器に多く用いられます。

過放電に弱い

過放電は、放電終止電圧を下回った状態で放電を行う「バッテリー上がり」の状態です。例えば、12Vの鉛バッテリーから電力を取り出せる下限電圧は10.5~10.8Vと言われており、一般的にバッテリー電圧が概ね11V以下になった状態を指します。過放電状態になると充電しても回復しないため、バッテリーの交換が必要になります。通常は制御用の部品に過放電防止機能が搭載されています。

期待寿命が短い

バッテリー容量が定格(公称容量)の80%に低下するまでに可能な充放電回数は、およそ400回程度と言われています(※シール型電池の場合)。毎日使用する場合、1~2年程度で定格の80%にまで充電量が低下してしまいます。浅い放電の段階で充電すれば寿命は延び、逆に深すぎる放電から充電すると寿命は大幅に短くなります。

 

リチウムイオン電池

リチウムイオン電池

リチウムイオン電池とは、正極にニッケル酸リチウムやコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、負極に炭素系素材が使用された二次電池のことをいいます。パソコンや携帯電話の充電バッテリーとして普及しています。リチウムイオン電池の特徴は以下の通りです。

質量比の容量が大きい

鉛蓄電池やニッケル水素電池など比較すると、同じ体積・重量で数倍のエネルギー密度(重量エネルギー密度=100~250Wh/kg)が得られます。小型で軽量化されているため、携帯用機器の電源に最適です。ポータブル機器の充電バッテリーとして広く普及しています。

電圧が高い

3.7Vの電圧を取り出せます。通常のアルカリ乾電池と比べると2.5倍程の電圧が得られます。同じ電圧を得るのに半分程の電池本数で済むというメリットがあります。

メモリー効果が無い

継ぎ足し充電に強く、繰り返しの充電を行う機器に適しています。日々の充放電を行うソーラー機器とも相性が良いとされています。

保存特性がよい

リチウムイオン電池の自己放電率は5%/月と非常に低い値で、ニッケル水素電池の5分の1以下です。一度充電しておけば数ヶ月はそのまま再充電せずに使用できます。

レアメタルを使用するため高価

正極材である「ニッケル」は中国など限られた国でしか産出されません。価格が高騰するなどコスト面でのリスクがあります。

電圧管理を誤ると危険

満充電に近い状態でバッテリーを蓄電すると劣化しやすくなります。完全に放電すると致命的な損傷となる場合があり、電池寿命を大きく減少させる危険があります。適切な電圧の管理が必要です。

適用可能温度の範囲が狭い

適用温度は、およそ0~45℃程度とされています。スマートフォンを充電しながら使用すると発熱してしまうため、バッテリーの寿命を縮める原因となります。

期待寿命が短い

充放電サイクル特性はおよそ500回程度とされています。毎日100%付近までの充電を行う場合、1年半ほどで電池容量が50%程度まで減少してしまいます。電池容量の低下を抑える使用方法であれば1000回以上のサイクルも可能です。

 

ニッケル水素電池

ニッケル水素電池

正極にニッケル酸化化合物、負極に水素化合物を用いる二次電池です。充電と放電を繰り返して使用できるため、マンガン電池やアルカリ電池などの一次電池より維持コストを下げることが可能です。ニッケル水素電池の特徴は以下の通りです。

容量密度が高い

ニッケル水素電池の重量エネルギー密度は、およそ60~120Wh/kgです。鉛バッテリーやニッカド蓄電池と比較すると容量密度が高くなっています。

環境負荷が低い

有害成分であるカドミウムを含みません。環境負荷が低くエコロジーな仕様です。

自然放電量が多い

自然放電とは、バッテリーを使用していなくても自然と放電してしまう現象です。満充電のバッテリーをセットしたとしても、そのまま数週間放置しているとほとんど残量が無い状態になってしまう可能性があります。従来のニッケル水素電池は1か月に30%もの自然放電が生じていましたが、パナソニックから発売されている「エネループ」はこの問題を解消し5年経過後の電池残量が70%となって大ヒットしました。

メモリー効果がある

充放電を管理しないとメモリー効果により電池容量が低下してしまいます。上述のエネループは従来のニッケル水素電池よりも電圧が高く、メモリー効果が起こっても十分な電圧を維持するためメモリー効果を気にせず使用できます。

手軽な充電が可能

ニッケル水素電池の充電には専用の充電器を使用します。家庭用コンセント(AC100V)以外から充電を行う場合は、インバーター(直流と交流を変換する装置)が必要となります。

電圧が低い

リチウムイオン電池が3.7V程度あるのに対し、ニッケル水素電池の公称出力電圧は1.2V程度と約3倍の開きがあります。例えば、12V製品を使用するためには電池を10個直列接続する必要があります。

 

キャパシタ

キャパシタ

キャパシタは電気をエネルギーの化学反応なしに充放電することが可能で、原理的には半永久的に使用することができる「理想的な充電バッテリー」です。但し、大容量化は現在のところ研究段階であり様々な用途に向けての実用化が進められています。

短時間で充放電が可能

単位重量当たりに出力できる電力量が二次電池では100W/kg程度である一方、キャパシタは1000W/kgを超えます。充放電による劣化が生じ難く、寿命の長さが大きな特徴です。

低い電圧でも充電が可能

低電圧でも充電が可能です。例えば、ソーラーパネルを使用した場合は曇天時に発電量が小さくなりますが、キャパシタであれば充電が可能です。

適応温度範囲が広い

適応温度はおよそ-25℃から60℃まで使用可能です。

電圧が低い

現在では、充電できる電圧は最高でも3V程度です。エネルギー密度が低く、容量にも制限があります。

自己放電が多い

自己放電率が比較的高く、電気を長時間貯めておく使用方法には適していません。近年では自己放電を低下した使い勝手の良い製品も登場しています。

価格が高い

レアメタルを使用するわけではないものの電極の加工にコストが掛かります。製品価格も比較的高価となっています。

充電量が小さい

他のバッテリーと比較すると充電量が非常に少ないため(同じ容量のニッケル水素蓄電池の約250分の1)、大量の電力を消費する機器の使用には適していません。

 

防災用バッテリー まとめ

お読みいただきありがとうございました。このページでは、防災用バッテリーについてご紹介しました。防災用のバッテリーは二次電池と呼ばれる蓄電池がメインです。数多くの種類がありますが、ここでは代表的な4種を取り上げました。それぞれ異なる特性をもち、メリットやデメリットもバラバラです。防災用バッテリーを検討する際は、使用用途に応じた特性をもつものを選択することが求められます。ここで紹介した特性を把握したうえで、防災用バッテリーの選定にお役立てください。

コメント